2023年7月1日(土)、Gメッセ群馬にて全体研修を行いました。
医療法人あかぎはコロナ禍が続く7期を乗り越え、7月1日で8期を迎えます。
本研修は年一回、100人近くまで大きくなった組織の全員が集まる貴重な機会となりました。
2023年7月1日(土)12:00~18:00
Gメッセ群馬
第1部
- 理事長講話
- クリニック・訪問看護・居宅事業所からの発表(テーマ:人財育成について)
- 表彰
第2部
- 人材育成研修
- 抽選
理事長講話
第1部では、あかぎの診療の姿勢や心構え、今後のあかぎがめざす姿について、理事長より講話が行われました。
患者様が主体である
主体は患者様。説明を理解しているのか、「わかった」と言われても本当に理解しているか、顔を見ながら接することが重要です。
私たちが行っている訪問というのは、自分たちのホームであるクリニックに患者様がきてくれる外来と違って、患者様の家というアウェーでの治療になります。その場と人の都合に合わせる必要性が強いのです。
業界では、最初に決めた治療を絶対に変えない先生もいますが、それでは患者様を置いていく治療になってしまいます。医療のパワハラです。患者様が望んで「はい」と言っているのか、先生の説明に押し切られて言っているのか、汲み取っていかなければならない部分です。
今回の講話で、私はどんなふうに話をするかを考えました。前回はスライドを作ったのですが、暗くしないといけないし、それだと人の顔が見えなくなります。それではひとりよがりになるのでやめました。話を聞くだけだったら録音して聞けば良いからです。
組織が500人くらいになったらひとりひとりの顔が見えなくなるので諦めますが、200〜300人までは顔が見えます。それくらいの人数までは、顔を見ながら話したいと思っています。
医道:患者様への接し方は日常とつながっている
武道・茶道などの「道」では、稽古事と日常はリンクするとされています。診療も同じで、日常が出るものです。患者様に対して、スタッフに対して、家族に対して、どれか1個だけ良い接し方をするのではダメなんです。
働くというのは、他の人を楽にするということです。それは評価基準にもなっているのですが、余裕がないと他人まで気が回りません。
訪問の1号車が帰ってきて、遅れて2号車が帰ってきたとき。2号車の人は1号車の人に手伝ってほしい、でも1号車は早く帰ってきていても、忙しくて余裕がないかもしれません。1号車の人はいつかはそこに気づかなければいけないけれど、2号車の人がその状況で手伝えというのも違うと思います。そのときそのときで状況が違って難しいですが、そういうことを考えている必要があるんです。
あかぎの大前提、3つの「けんこう」
「健口から健康、そして健幸へ」
これに向けて、専門職に限らず、全員がヘルスプランナーであるという意識を持ってほしいです。そのときその時の状況に応じて、最適な提案をできるようになってほしいということです。
歯が全くないと入れ歯が安定しやすいですよね。1本2本残っているときに、医療側は抜きたくなります。そのほうが噛めるし、抜けた歯を飲み込んだら、という心配もあります。しかし、患者様は「自分の歯は自然に抜け落ちるまで大事にしたい」という場合もあるんです。そこを大切にできるか、説得してしまうか。大切にするのがあかぎです。
その人の背景が変化すれば、希望する治療方針も変わってきます。そこをくんで話ができるかが重要です。最初に決めた治療方針にこだわらず、変えていくべきです。
たとえば気道食道分離手術をすれば、自分の声を失うけれども誤嚥しないで安心して食べられる。はじめは「最期まで自分の声で話したいから手術しない」という選択をしていても、自分の娘が結婚して……となったら「孫の顔を見たいから、声を失っても手術してできるだけ長く生きたい」となるかもしれません。
どのように相手の心を知り、寄り添えるようになるか
大変な病気になる、親が亡くなるなどの経験を経て患者様に寄り添えるようになることがあります。
私もこの体にならなかったら、両親を亡くさなければ、そんなことは考えなかったかもしれません。目が見えなくなって、初めてわかるようになったこともたくさんあります。それでも全てを経験することはできません。
以前は歴史に興味がなかったんですが、過去の人の経験や生活・考え方を知ることができるので、そういったものに触れるようになりました。そうやって自分の中に情報を入れて消化しながら、どんなふうに患者様に接していけば良いかを考えています。
8期に目指す、トータルな患者様のサポート
学校の教育では、世界史・日本史・地理・産業……とバラバラに学びます。しかしそれらは相互に関係しながらあるわけです。医療も色々な科目がありますが、人体はひとつです。それを組み合わせて再構築してから患者様に向き合っていく必要があります。私たちのような、最前線で患者様に接する人がその役割を担っています。多職種連携、地域連携がそれにあたります。そのなかで歯科の話しかできない・看護の話しかできないでは困るんです。たまたま歯科の分野しか知らないから、歯科を切り口に話を始めるというだけです。
その人の生活まるごとトータルで見た視点が必要となります。それができるような組織にしていきたい。それを作っていくのが今日から始まる第8期だと思います。
栄養士さんが入るという話がでていて、そこでようやく作りたかったNST(栄養サポートチーム)ができます。初めて食の分野に入っていけるわけです。食は人を良くするものですから重要な問題です。
美味しいものを食べたら良いのではなく、孤食の問題もあります。「何を」も大事ですが「誰と」も重要です。そこが介護で提供できているかというと、できていないんです。人が不足している中で、どのようにやっていくか考える必要があります。
人間は自然の理の中で生かされています。社会的な中でも生かされています。しかし、生かされているというけれど、生かされているピースの1つになれなかったら意味がありません。
時代の流れでなくなる職業もあります。それを考えながら進む必要があります。少子高齢化で人手不足が叫ばれていますが、法人としては人員削減は全く考えていません。
海外では薬剤師が軽症の人を対応できるようになった国もあります。歯科でいうと技工の問題ですね。歯科医がやっても点数がついて、となったらやる人はやります。
3手先・5手先を考えると、専門職の人がさらに大活躍できる時代になるから、専門職だからといってそれしかできないというのではなく、さらに別の専門的な知識をつけてもらいたいですね。今でいう「リスキリング」です。法人内でお金を使って教育を行っても、その人が辞めてしまったらという話もありますが、私はそれでも社会には貢献できるから良いと思っています。学びたいとなったら助成をして応援していこうとしています。
世の中が変わらないといけないことではありますが、法人として一石を投じています。
生かされているということ
「生かされている」ということを大切にしてほしいと思います。
私は片目が見えない状態で、見えない方の目は段々白く濁りつつあります。いつかは真っ白になります。
自分の場合はアトピーが原因でした。網膜が剥がれてしまい、それを手術で手作業で貼り直してもらいました。左目はなんとか見えたのですが、右目はガラスを割ったような亀裂が中心まで入っていました。
今でも覚えているのですが、5月5日の朝起きたら右目が見えなくなっていました。25歳のときです。5月4日までは見えていたんです。いつか目が覚めたらもう一度見えるようになっているのではないかという思いは、心の奥底にずっとあります。
そういう思いは、患者様の中にもあると思います。その部分にどう寄り添っていくかだと思います。
アトピーがひどかった頃は、電車に乗ると自分の周りに空間ができました。肌がケロイドで岩のようにかさかさになっていたからです。写真が嫌で、外にも出たくありませんでした。今でも、これから片目が真っ白になった時に子どもたちが周りから何か言われるのではと心配もします。
でも、そういうことがあるのが人生です。受け止めながら生きていくしかないのです。
そんな歯医者として使い物にならない状態でも、前職では拾ってもらい、育ててもらえました。
そして今では独立して、こうして皆様と一緒に仕事ができています。
誰かが拾ってくれなかったら自分の人生は開かれなかったと思います。
これからのあかぎ
もっと風通しの良い組織にしていきたいですね。どうやったらできるか、を考えてチャレンジしてほしいと思っています。いつも言っている通り、最後の責任は自分が取るのでみなさんには色々挑戦してほしいです。失敗は失敗と思わないでほしい。もしかすると10年たってもできないかもしれないですが、それでも良いんです。そうやって成長していくものです。あかぎは成長していく組織です。
そして、皆が優しくなれる、慈しみ合えるようになれると良いですね。
みなさん力を合わせて、また来年の7月1日に顔を合わせたいと思います。
ありがとうございました。
クリニック・訪問看護・居宅事業所からの発表
「人財育成」をテーマに、各事業所から発表が行われました。
ひとくちに「人財」といっても、定義も切り口も発表の方法も異なり、それぞれの事業所のカラーが出る企画となりました。
表彰
発表後は各事業所の発表に対し、表彰が行われました。
- あかぎ賞(投票により選出)
観劇形式で聴衆を楽しませながら発表した伊勢崎デンタルクリニックに贈られました。
- 理事長賞(理事長が選出)
館林デンタルクリニックに贈られました。クリニックの高橋先生は、2年前登壇した際は思うに任せない点もありましたが、今日まで大変な家庭環境の中でも自分を変えられたことが評価のポイントとなりました。
人材育成研修
第2部はゲーム形式の研修です。
ランダムに分けられたチーム対抗で、情報伝達の正確さが競われました。
みごとなパフォーマンスを出すチーム、珍回答を生んでしまったチームなど、驚きと笑いの中でチームワークの大切さと難しさ・楽しさを再確認する機会となりました。
ギャラリー
編集後記
今回は外部委託者の立場ですが全体研修に参加させていただきました。半年以上前からWeb関連のお仕事でご一緒させていただいておりましたが、初めてオフラインで直接お会いすることができました。
以前、スタッフの皆様に法人についてインタビューをさせていただいた際に、異なる事業所・異なる職種にもかかわらず、一様に「人が良い組織」「どんな意見も言える」とおっしゃっていたことに驚かされました。インタビューのことを覚えていてくださり、声をかけてくださったのは嬉しかったです。実際の組織の空気を肌で感じて、本当に温かい雰囲気で風通しの良い組織なのだと再確認しました。
人の最期に関わることの多いお仕事ですが、皆さんとても明るく前向きなのも印象的でした。オンラインは便利で私と皆様との出会いも与えてくれたものであると同時に、こういった雰囲気のように、画面越しでは伝わりきらないこともあります。実際に会って交流することでしかわからないことも多々あるのだと感じました。
また私自身は個人事業主で、普段はひとりで仕事をしており、孤食も1ヶ月人に会わないのもなんとも思わない質です(笑)。しかし、多くの人が集まる組織の良さを改めて感じることができました。
この度は、そんな機会を与えてくださりありがとうございました。